角地・準角地については、標準的な土地と比べて、土地の利便性が高くなるため、相続税上は、その分評価額が高くなります。
しかし、角地といっても、「不整形地」の場合など、「側方路線」に、宅地の一部分のみが接している角地もあります。
こういった「特殊な角地」の場合は、どのように評価するのでしょうか?
今回は、「側方路線に宅地の一部分のみが接している角地」や「不整形地の角地」の評価方法につき解説します。
目次
1. 角地の評価方法
相続税上の「角地の評価方法」は、以下の式のように側方路線の影響部分を加算します。詳しくは、Q74をご参照ください。
- ① 正面路線価 × 奥行価格補正率
- ② 側方路線価 × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率(円未満切捨)
- ③ 角地等の評価 =(① + ②) × 地積(㎡)
ただし、「側方路線」に、宅地の一部分のみが接している角地の場合は、「側方路線影響加算率」を調整します。以下具体例で解説します。
2. 整形地の一部分のみが接している角地の場合
● 普通住宅地区の「奥行価格補正率」は、奥行20mの場合1.00、奥行36mの場合0.92です。
● 普通住宅地区の、角地の「側方路線影響加算率」は0.03です。
● 角地の相続税評価額は?
(1)角地or準角地の判定
今回の事例は、一部道路に接していない部分がありますが、2系統の通行方向がある道路に面した土地となりますので、準角地ではなく、「角地」になります。
(2)正面路線価の判定
正面路線の判定は、それぞれの路線価に対応する「奥行価格補正率」を乗じた金額を比較し、金額が高い方となります。
●250,000 × 1.00 (奥行20mの奥行価格補正率) = 250,000円
●260,000 × 0.92 (奥行36mの奥行価格補正率) = 239,200円
250,000円 > 239,200円のため、金額の高い、250,000円の路線が「正面路線」となります。
(3)正面路線価 × 奥行価格補正率
250,000円 × 1.00(奥行20mの奥行価格補正率) = 250,000円
(4)側方路線価 × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率
今回の事例は、宅地の一部分のみが、側方路線(路線価260千円側)に接しています。
こういった場合、側方路線の影響を受けているのは、路線に面している8mの部分のみで、残り12m部分は側方路線の影響を受けていないと考え、側方路線影響加算率を調整します。
260,000円 × 0.92(奥行36mの奥行価格補正率)× 0.03(側方路線影響加算率)× 8m / (8m+12m)(※) = 2,870円(小数点以下切り捨て)
(5)((3)+(4))×地積(㎡)
(250,000円 + 2,870円 )× 720㎡ = 182,066,400円
3. 不整形地の一部分のみが接している角地の場合
● 普通住宅地区の「奥行価格補正率」は、奥行49.3mの場合0.89、奥行43.2mの場合0.91です。
● 普通住宅地区の、角地の「側方路線影響加算率」は0.03です。
● 計算上の奥行距離は、小数点第二位以下切り上げ(納税者有利)とします。
● 角地の相続税評価額は?
(1)角地or準角地の判定
今回の事例は、一部道路に接していない部分がありますが、2系統の道路に面した土地となりますので、準角地ではなく、「角地」になります。
(2)計算上の奥行の算定
正面路線価の判定は、それぞれの路線から見た奥行距離に対応する「奥行価格補正率」を乗じた金額を比較し、金額が高い方となります。
①路線価100,000円の方から見た場合
①計算上の奥行距離 | 1,725㎡(不整形地の面積)÷35m(間口距離)= 49.3m(切上) |
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想定整形地の奥行距離 | 50m |
結論 | ①<②のため、短い方 ①計算上の奥行距離49.3mを選択 |
②路線価60,000円の方から見た場合
①計算上の奥行距離 | 1,725㎡(不整形地の面積)÷40m(間口距離)= 43.2m(切上) |
---|---|
想定整形地の奥行距離 | 50m |
結論 | ①<②のため、短い方 ①計算上の奥行距離43.2m選択 |
(3)正面路線価の判定
● 100,000円 × 0.89 (奥行49.3mの奥行価格補正率) = 89,000円
● 60,000円 × 0.91 (奥行43.2mの奥行価格補正率) = 54,600円
89,000円 >54,600円のため、金額の高い、100千円の路線が「正面路線」となります。
(4)正面路線価 × 奥行価格補正率
100,000円 × 0.89 (奥行49.3mの奥行価格補正率) = 89,000円
(5)側方路線価 × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率
今回の事例は、宅地の一部分のみが、側方路線(路線価60千円側)に接しています。
こういった場合は、側方路線の影響を受けているのは40mの部分で、想定整形地との差額10mの部分は側方路線の影響を受けていないと考え、側方路線影響加算率を調整します。
60,000円 × 0.91(奥行43.2mの奥行価格補正率)× 0.03(普通住宅地区・角地の側方路線影響加算率)× 40m / (10m+40m)(※) = 1,310円(小数点以下切り捨て)
(5)((4)+(5))×地積(㎡)
(89,000円 +1,310円 )× 1,725㎡ = 155,784,750円
(6)不整形地補正
①想定整形地 | 50m × 50m = 2,500㎡ |
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②不整形地面積 | 1,725㎡ |
③かげ地割合((①-②)/①) | (2.500㎡ – 1,725㎡) ÷ 2,500㎡ = 31% |
不整形地補正率 | 普通住宅地区 地積区分C・かげ地割合30%以上 ⇒ 0.96 |
(7)不整形地補正後の最終的な評価額
155,784,750円×0.96(不整形地補正率)=149,553,360円
4. 参照URL
(奥行価格補正率表)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
(側方路線に宅地の一部が接している場合の評価)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/05.htm
(側方路線影響加算の計算例――不整形地の場合)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/24.htm