Q17【令和3年改正】相続税の2割加算になる方・ならない方/死亡保険金や養子・孫の取扱いをわかりやすく解説!

 最終更新日:2023/08/26 閲覧数:20,487 views

相続税は、財産を取得する人によって、最終的に算出された「相続税額」に20%加算される場合があります。
「相続税の2割加算」と呼ばれるものです。
例えば、「お孫さん」などが財産を取得する場合などは、原則として「相続税の2割加算」の対象となります。

 

 

1.対象者・なぜ2割加算?

(1)2割加算の対象者

加算の適用のない方 加算対象者
  • 配偶者
  • 1親等の血族(父母・子)養子も含む
  • 子の代襲相続人
  • 養子縁組をした者(孫養子は除く)
  • 祖父母(2親等)
  • 兄弟姉妹及び代襲相続人(2親等)
  • 孫(2親等)(代襲相続人を除く)・孫養子
  • おい、めい(3親等)
  • 血のつながりがない方(内縁の妻、夫など)

 
養子縁組をした孫は、民法上は、「実子」同様「1親等血族」となりますが、相続税逃れの観点より、2割加算の対象になります。
孫が代襲相続する場合は、孫として相続ではなく子に代わって相続する立場のため、相続税上は、1親等の血族と考えて、2割加算は行われません。ただし、代襲相続した孫が「相続放棄」した場合は、2割加算の対象となります。
 

(2)なぜ2割加算するのか?

2割加算する理由は、以下の通りです(孫が、財産を取得する場合を例)。
 

子供が相続する場合と比べて「偶然性」が高く、そもそも生活の元手となることが 予定されていない。
孫が直接、財産を取得する場合は、お子さんが相続した場合に本来支払うべ き相続税を 1 度スルーすることになるので、相続税を1回免れることになる。

 

2.2割加算の計算方法

 
2割加算が行われる場合の加算金額 = 各人の税額控除前の相続税額 × 0.2
 

3.生命保険の死亡保険金も「2割加算」の対象

死亡保険金(生命保険金)は「みなし相続(遺贈)財産」となり、相続税の課税対象かつ2割加算の対象にもなります。例えば、お孫さんが死亡保険金を受け取る場合は2割加算の対象となります。
 
なお、死亡保険金には、一定の非課税枠が認められていますが、「非課税枠」が認められるのは「相続人」のみです。
例えば、孫(代襲相続人除く)が死亡保険金を受け取る場合は、2割加算かつ「相続人」ではないため「生命保険の非課税枠」の適用もありません。
 

孫が生命保険の受取人として死亡保険金を受け取った場合、遺贈により財産を取得したとみなされ、「7年内生前贈与加算の対象」になります(令和5年12月末までは3年内)
(通常の場合、孫は相続財産を取得しないため、7年内生前贈与加算の対象外)。
 

4.2割加算は損?

孫などが相続すると「2割加算」となりますので、税負担が多くなることが想定されます。
しかし、二次相続まで考慮すると、「相続税総額」はお得なケースもあります。
なぜなら、確かに2割加算にはなりますが、相続税を1回飛ばすことができるためです
 
つまり、「一次相続」でお子さんが相続した分は、いずれお孫さんが相続する時(二次相続)がやってきます。
この「二次相続」の際にかかる相続税と、今回2割加算で支払う相続税、どちらが安く収まるのか?ということです!

 

5.例題

  • 母が死亡(一次相続)、子1人死亡(二次相続)、孫1人いるものとする。
  • 一次相続時の母の財産は5億円。
  • 二次相続時の法定相続人は孫1人のみとする。簡便的に、二次相続時のお子様の財産は、一次相続で取得した「税引後財産」のみとし、その他の固有の財産は保有していないものとする(遺留分も無視)。
  • 、母死亡(一次相続)⇒ 子死亡(二次相続)した場合のトータルの相続税額は?
  •  
    (1)ケース1  一次相続時に、母から孫へ全額財産を遺贈(一次相続のみで完結・2割加算)
    (2)ケース2  母 ⇒ 子に全額相続(一次相続) ⇒ 子死亡時に孫へ全額相続(二次相続)

 

(1)ケース1(一次相続時に、母から孫へ全額財産を遺贈)

①課税価格の合計額(遺産総額)

5億円
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人 子1人)=3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

5億円 - 3,600万円 = 4億6,400万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
子供分 1億9,000万円 4億6,400万円 × 1/1(法定相続割合) = 4億6,400万円
4億6,400万 × 50% -4,200万円 = 1億9,000万円
孫分 0円 孫は「法定相続人」ではないため、相続税総額の計算には関係しない
合計 1億9,000万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
子供分 0円 ケース1は、お子さんは相続しないので ⇒ 子の相続税はゼロ
孫分 2億2,800万円 1億9,000万円 × 1/1(実際相続割合) ×120% = 2億2,800万円
一時相続の税額計 2億2,800万円

 

(2)ケース2(母 ⇒ 子に全額相続(一次相続)・子死亡時に孫へ全額相続(二次相続))

【一次相続の相続税額・子供】

①~④

 上記5.(1)①~④と同じ
 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
子供分 1億9,000万円 1億9,000万円 × 1/1(実際相続割合)= 1億9,000万円
孫分 0円 ケース2は、一次相続では孫は財産取得しないため
相続税額計 1億9,000万円

 
【二次相続の相続税額・孫】

①課税価格の合計額(遺産総額)

5億円 – 1億9,000万円 =3億1,000万円 (一次相続でお子さんが引き継いだ、税引後の財産)
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人・孫1人)=3,600万円
 1

③課税遺産総額(① ‐ ②)

3億1,000万円 - 3,600万円 = 2億7,400万円
 

④⑤相続税額の計算・各人の相続税額

2億7,400万円 × 45% - 2,700万円 = 9,630万円

 

(3)合計相続税額(一次相続+二次相続)

1億9,000万円 + 9,630万円 = 2億8,630万円

 

6.結論

2割加算された「ケース1」の方が、相続税額が5,000万以上も安くなっています。
つまり・・今回のケースは、たとえ2割加算があるとしても一次相続で「孫が全額財産を取得したほうが得」ということになります。

 

7.令和3年改正 教育資金贈与の非課税枠との関係

教育資金一括贈与として、1,500万円の非課税制度がありますが、令和3年改正により、以下の変更があります。

満30歳に達するなど「教育資金一括贈与非課税制度」終了前に、贈与者が死亡した場合、一定の場合、死亡日における未消費残額(管理残額)が相続税課税対象となります。
上記の場合、孫・ひ孫に相続税が課税される場合は、「相続税の2割加算」が適用されます(2021年改正)。

 

8.参照URL

(相続税額の2割加算)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm

(相続税率)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

9.YouTube

 
 
YouTubeで分かる「相続税の2割加算になる方・ならない方」
 

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