Q101【特定路線価とは】設定できるケース・条件は?設定は義務なのか?設定申請するべきなのか・・

 最終更新日:2023/05/30 閲覧数:8,065 views

DR178

 
実務上、路線価地域内でも、土地の「路線価」が設定されていない道路があります。
こういった、土地の「路線価」がない場合、どうやって相続税評価をするのでしょうか?
今回は、路線価が設定されていない場合に、税務署に申請して設定する「特定路線価」につき解説します。

 

1. 特定路線価って?

路線価地域内の道路でも、路線価が設定されていない道路も多数あります。例えば、以下のような土地です。

 


 
こういった「路線価がついていない土地」は、税務署に「路線価設定の申し出」をすることができます。
この「申し出」により、税務署が設定した路線価は、「特定路線価」と呼ばれます。
特定路線価は、通常、約1ヶ月程度で設定されるのが一般的です。
 
なお、例年、路線価は7月上旬ごろ公表されますが、その年の路線価が公表される前の時期は、特定路線価の設定を申請することはできません

 

2. 特定路線価を設定できるケース

特定路線価が設定できるのは、路線価地域にある道路となります。倍率地域の土地は、固定資産税評価額で評価を行うため、特定路線価を設定する必要はありません。
また、すべての道路に特定路線価が設定できるわけではありません。設定できる道路は、以下の道路に限定されています。
 

(1) 不特定多数の通行用の道路のみ

特定路線価が設定できるのは、「不特定多数の者の通行の用に供されている」道路だけです。
「特定の者」の通行の用に供されている道路(=私道)には、特定路線価は設定できず、原則として宅地の一部として一体評価することになります。
 

路線価は宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定する・・路線とは、「不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいう」(財基通14)

 

(2) 建築基準法上の道路が対象

特定路線価が設定できる道路は、「建築基準法」の道路です。建築基準法上の道路かどうか?は、役所で確認できます。
 
「建築基準法上の通路に接していない土地」には、建物自体の建設ができませんので、一般的に価値は低くなります。したがって、「建築基準法の道路に接していない土地」は、一般的には特定路線価の設定申請はせず、無道路地として評価を行う方が相続税評価額は低くなります。
 

(建築基準法上の道路)
建築基準法42条Ⅰ①~⑤、42条Ⅱ、43条Ⅰ但書の許可を受けた道路

 

(3) 側方路線や裏面路線には設定できない

「路線価の設定されていない道路のみに接している宅地」しか、特定路線価は設定できません。
例えば、路線価がある道路と、路線価のない道路の両方に接道している土地については、特定路線価の設定はできません。逆に言うと、「側方路線」や「裏面路線」には、特定路線価の設定はできないということですね。
 

路線価地域内において・・路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合には、・・・「特定路線価」・・を納税義務者からの申出等に基づき設定することができる(財評基通14-3)

 

3. 特定路線価は設定すべきか?

(1) 特定路線価は「高め」に設定される

特定路線価を申請した場合、通常は「高めに設定」されることが多いため、特定路線価を申請した結果、相続税評価額が高くなってしまう可能性は高いです。
 
路線価がついていない道路は、「私道」や「建築基準法上の道路ではない」場合がほとんどです。
こういった道路には、本来、特定路線価は設定できないはずですが・・税務署に申請すれば、実務上は、特定路線価が設定されてしまうケースもあります。しかも、特定路線価は、近隣土地や固定資産税評価額等を参考に設定されるため、思った以上に「高い金額」で設定されてしまいます。
 
特定路線価の設定は、「強制ではなく、あくまで任意」ですので、むやみやたらに申請するのが得策とは限りません。

 

(2) 実務上は?

私道」は宅地に含めて評価、「建築基準法上の道路でない」場合は、無道路地として評価した方が、ほとんどの場合、相続税評価は安くなります。特定路線価よりも無道路地として評価した方がお得なケースは、Q105をご参照ください。
 

結論ですが・・特定路線価を設定申請する前に、まずは「無道路地・旗竿地としての評価ができないか?」を検討することが、相続税評価の観点からは有用かなと思います。
 

4. 正面路線価はあるが、側方路線価がない土地の評価

この場合、正面路線価のみで評価します。
つまり、側方路線影響加算、二方、三方又は四方路線影響加算は適用されず、相続税評価額は低く抑えられます。
公道でもない道路に接しているからと言って、評価が加算されるのも・・変ですよね。
 
なお、特定路線価は、評価する対象の土地専用のものです。
たとえ、隣接する他の土地に設定された「特定路線価」が存在したとしても、当該特定路線価は、自分の土地を評価する際の路線価としては利用しません。つまり、設定された特定路線価は「他の土地の評価」には影響を与えません。こちらについては、Q107をご参照ください。

 

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