Q23【わかりやすく】特定事業用宅地等の特例とは?駐車場業やアパート経営は要件を満たすのか?3年以内の制限とは?

 最終更新日:2022/02/25 閲覧数:11,496 views


 

例えば、自営業者が、事業で使っていた土地については、一定要件を満たす場合、相続税評価額が80%減額できます。
「特定事業用宅地等の特例」と呼ばれます。
 
ただし、すべての事業が対象ではありません。「不動産貸付事業等」は特例の適用ができません。
今回は、「特定事業用宅地等の特例」の要件や、対象となる事業、転業した場合等の取扱いにつき解説します。
 

1. 特定事業用宅地等の特例とは?

被相続人や同一生計親族事業として利用していた宅地等を、被相続人の親族(※)が取得し、一定要件を満たした場合、評価額を80%減額してもらえる制度です。
 

(※)特定居住用宅地等と異なり、配偶者だけ特別扱いされず、「親族」として同列で扱われる点が特徴です。

 

(1)事業とは?

被相続人等の事業からは①不動産貸付業②駐車場業③自転車駐輪場業④準事業(事業と呼ぶに至らないもの)は除かれています
つまり、所得税上、不動産所得・雑所得に該当する場合は、今回の「特定事業用宅地等の特例」の適用はできません。
所得税上、「事業所得」に該当する事業を営む場合が、今回の「特例の対象」となるイメージでよいかと思います。
 
なお、不動産貸付事業等については、「貸付事業用宅地等の特例」の適用が可能です。
 

(2)同一生計親族が事業用で使用する場合とは?

例えば、被相続人の土地上で、「生計一親族」が事業を経営している場合などです。
「生計別親族」が事業を経営している場合は、適用できません
 

2. 一定要件とは?

(1)対象となる宅地

相続開始前3年以内に「新たに事業の用に供された宅地等」は除外されます。
⇒つまり、原則として、3年を超えて継続している事業用の宅地である必要があります。
 
ただし、上記「3年内に新たに事業の用に供された宅地等」でも、例外的に、以下の宅地は特例の適用が可能です。
 

一定規模以上の事業(特定事業)の用に供される宅地
(措通69の4-20の3)
被相続人保有の事業用減価償却資産 / 新たな事業用宅地等≧15%
被相続人が相続開始前3年以内に相続(or遺贈)により事業用宅地等を取得した場合(措令40の2⑨) 祖父が30年以上経営していた工場土地を父が相続&事業引継ぎ⇒父が3年を経たずに死亡したケースなど

 

また、建物や構築物等の敷地である必要がありますので、更地は特例の対象外となります。
 

(2)保有継続要件

相続税の申告期限まで、当該土地を保有している必要があります。
 

(3)事業承継・事業継続要件

相続税申告期限に、土地の相続人が、「事業」を引き継ぎ、営んでいる必要があります。したがって・・
 
●「被相続人」が事業を行っていた場合は、「土地の相続人」が申告期限までに事業を引き継ぐことになります
(取得者=事業承継者)。
● 一方、「同一生計親族」が事業を行っていた場合は、「土地の相続人」は「当該同一生計親族自身」である必要があります(取得者=事業継続者)。

 

 

事業経営者 土地等相続人 要件
被相続人 親族(※) 申告期限までに事業を引き継ぎ、かつ事業を営んでいる(事業承継要件)
同一生計親族 同一生計親族 申告期限まで、引き続き事業を営んでいる(事業継続要件)

 

(※)被相続人が経営していた宅地を取得する親族については、「同一生計親族」の要件はありませんので、親族であればOkです。
 
なお、事業の承継者と宅地の取得者が異なる場合は、要件を満たさないため、特例の適用はできません
(例)事業を営んでいた父が死亡 ⇒兄が事業を承継し、弟が事業用宅地等を相続する場合 ⇒要件満たしません。
 

3. 事業用宅地等を転業・廃業した場合

事業用宅地等の特例は、「相続税申告期限」まで、「事業の継続性」が必要とされています。
「相続税申告期限」までに相続人がその事業を転業・廃業した場合、以下の取扱いとなります(租措法通達69-4-16)。
 

(1)被相続人が事業を営んでいた場合

この場合、事業の一部を転業した場合、転業した部分も含めて、事業の継続性は認めるものとされています
(不動産貸付業等への転業は×です)。
また、事業の一部を廃止したときには、廃止事業以外の宅地等の部分は、特例の適用が認められます。
逆にいうと、一部ではなく、全部転業した場合や、全部廃業した場合は、特例は認められないと考えられます。
 

(2)同一生計親族が事業を営んでいた場合

同一生計親族が事業を行っていた場合は、たとえ、「相続税申告期限」までに事業を転業した場合も、特例の適用が可能です。ただし、上記(1)同様、不動産貸付業への転用は×です。

 

4. 限度面積

400㎡までとなります。
 

5. 参照URL

(No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例))

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

(政令で定める規模以上の事業の意義等)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/sochiho/080708/69_4/01.htm#a-4-20-3

(申告期限までに転業又は廃業があった場合)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/sochiho/080708/69_4/01.htm#a-4-16
 

6. YouTube

 
YouTubeで分かる「特定事業用宅地等の特例の要件は?」
 

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