扶養義務者間での生活や結婚等の資金については、「その都度支払う分」は贈与税がかかりませんが、一括贈与する場合は、原則として贈与税がかかります(Q2参照)。
ただし、例外的に、「結婚や子育て等に対する資金」については、一括贈与の場合の特別の非課税枠が認められています。「結婚・子育て等資金の一括贈与の非課税制度」と呼ばれます(措置第70 条の2の3)
目次
1.結婚・子育て等資金の一括贈与の非課税制度って?
期間限定で、非課税の上限が定められています。概要は以下の通りです。
期間 | 令和5年3月31日まで |
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非課税枠 | 受贈者(子供や孫など)1人につき1,000万円まで(※1)(Q2-3) (結婚関係は300万まで)で(※2) また、暦年贈与(年間110万まで)との併用も可能 |
終了時期 |
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対象 |
受贈者の配偶者(子や孫等の配偶者)の直系尊属は× |
手続 |
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(※1)贈与者1人ではない(例 子供1人に祖父1,000万円+祖母1,000万円=2,000万円×)
(※2)非課税限度額の総額はあくまで1,000万円であり、1,000万円の枠内に、結婚関係支出300万円が含まれる。
1,300万円までが非課税ではない。
(※3)2022年4月1日以後は、18歳以上50歳未満となります。
2.結婚・子育て資金の範囲は?
内閣府Q&Aで、細かく規定されていますが、実務では判断に迷うものも多いです。
以下、代表的なものを記載します(詳しくは内閣府HPをご参照ください。)
(1)結婚関係
- ①結婚式・披露宴費用
- 挙式費用、衣装代、披露宴、2次会費用等
(婚姻にかかる費用は入籍前1年前の日以後支払のものが対象)(Q1-3、1-4)
- 婚活費用、結納式費用、指輪、エステ代などは×
- ②新居の引っ越し、賃料
- 新居家賃、敷金、礼金、新居引越費用等
- 家賃・敷金その他は、入籍前後1年内契約で、契約日から3年間に支払われたもの(Q1-3、1-5,1-6)
(「引越費用」は転居日が入籍前後1年内のもの) - 光熱費、家具家電購入費、引越レンタカー代は×
(2)妊娠・出産・育児関係
- 不妊治療費用、妊婦検診、出産費用、産後ケア費用、子の治療費、予防接種、検診費、医薬品代(処方箋)、入園料・保育料(ベビーシッター代含む)等
- 上記に関連する交通費、宿泊費などは×
(出産にかかる分娩費用、産後ケア費用等は、出産日以後1年経過日までに支払われる分に限定。子供の医療費に関しては、小学校入学前までの費用のみ)(Q1-3、Q1-7)
3.結婚・子育て等資金以外の支払いを行った場合は?
贈与税が課せられます。
結婚・子育て等資金以外の支払を行った場合、ご自身で「贈与税申告」を行わなければいけません
(銀行が申告してくれるわけではない)
4.終了時点と課税時期
次の場合に終了します。終了時点で課税されます(Q5-1,5-2)。
①受贈者が50歳に達した場合
②結婚等口座残高が0になった場合
③受贈者が死亡した場合
- 原則として、終了時点で「結婚等資金支出額」を超える分に「贈与税」が課税されます。
「結婚等資金支出額」は、金融機関等が領収書等で教育資金の支払事実が確認された金額となります。 - ただし、上記③の場合は、たとえ口座に資金が残っていても贈与税は課税されません。残高は、贈与者の口座に戻されます
- 贈与者が亡くなる前にすべて使い切れば、贈与税も相続税もかからない
- 支出の用途が広いため利用できる場面は多い
- 使い切れなかった場合や、目的外支出の場合は贈与税がかかる
- 贈与者が先に死亡した場合は、その時点で相続ないし遺贈扱いとなり、相続税がかかる。
- 金融機関への領収書提出が大変(毎年提出)
5.贈与者が先に死亡した場合
上記終了時点までに、贈与者が先に死亡した場合はどうなるんでしょうか?
一般的には、このケースが一番多いと思います。
この場合、贈与者が死亡した時点で、死亡時の未消費残額(管理残額)につき、相続時に受贈者(お孫様等)が相続(又は遺贈)したものとみなして、相続税の課税対象となります。(Q4-1)
上記で、子以外の直系卑属(孫、ひ孫等)に相続税が課税される場合は、「相続税の2割加算」が適用されます
(2021年改正)(Q4-4)。
なお、受贈者が相続(又は遺贈により)管理残額以外の財産を取得しなかった場合には、「相続開始前7年以内生前贈与加算」の規定(相続税法第 19 条)の適用はありません。(Q4-3)
6.手続
(1)金融機関で口座開設
「結婚・子育て口座」を開設して入金(口座は子や孫名義、信託会社の場合は本人名義)。
その際、「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出(Q2-1)
(2)税務署への提出
金融機関が「結婚・子育て資金非課税申告書」を税務署に提出
(消費者や税理士が、直接税務署にいくことはありません)
7.まとめ
そもそも、親や祖父母は、子どもや孫を「扶養する義務」があり、扶養義務者間において、通常必要となる「生活費」や「教育費」は非課税とされています。
つまり、子育て費用、結婚費用であっても、「その都度」贈与する分については非課税(Q2)となります。
したがって・・まずはそちらを検討の上、不足分につき、この制度を検討することになります。
現実的には、今回の「結婚・子育て等資金の一括贈与の非課税制度」の利用実績は少ないようです。
特に、子育て資金等に関しては、小学校入学前に限定されているため、「教育資金の一括贈与の非課税制度」を利用される場合が多いのかもしれません。
銀行口座を開設する手間や、贈与者が先に死亡した場合に残額につき課税されるため、使い切らないと節税効果を完全に享受できない点なども背景としてあるのかもしれませんね。
次回の適用期限の改正時には、制度の廃止も含めて検討される予定とのことです。
メリット | デメリット |
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8.参照URL
(結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/01.htm
9.YouTube
YouTubeで分かる「結婚・子育て・出産等資金 贈与税非課税枠1,000万円」